「父さん、どうしたの?」……息子が覚えた違和感
「父は真面目を絵に描いたような人で、浮気や怪しい話とは無縁の人生でした。だからこそ、なんともいえない気持ちになりました」
そう声を落とすのは、関西のメーカー企業で働く誠さん。都内で一人暮らしをする父親の清志さん(71歳)は、堅物ともいえる真面目な元公務員でした。
65歳で退職したあとも、近所の学童保育で子どもたちの見守りスタッフとして週3回勤務。収入は年金と合わせて月30万円ほどあり、長年連れ添った妻との生活は穏やかそのものでした。
しかし清志さんが68歳の時、妻ががんにより急逝。「妻と一緒にいるのが生きがい」とこぼしていた清志さんの落胆は激しく、アルバイトも辞めて家に引きこもりがちに。しかし、関西で暮らす誠さんにできるのは、「何かあったらいつでも電話してくれ」という声掛けだけでした。
変化があったのは、母が亡くなって2年経つ頃。帰省した誠さんを玄関で出迎えた清志さんは、憂鬱さがなくなり表情が明るくなっていました。服装も、以前なら着ないような少し若いデザインのシャツを着ています。
「最近、行きつけの飲み屋ができたんだ。色んな人と話すようになってな」
誠さんは「外に出る気力が湧いたなら良かった」と胸を撫で下ろしました。しかし、年が明けた正月の帰省。誠さん一家を出迎えた清志さんの様子は一変していました。
やつれた顔、おどおどした目線。どこか遠くを見つめて溜息ばかりついています。
「体調でも悪いの?」と聞いても、「いや、大丈夫だ」と目をそらす。昔から嘘をつくのが下手な父です。誠さんは家族の目を避け、清志さんを2階の部屋へ連れていきました。
「心配だから、何かあるなら俺にだけは話して」
そう伝えると、清志さんはこぶしを握り締めながら「まさかの告白」を始めました。
